東洋経済 『ブログキャスター』 編集部です。
WOWOW初のオリジナル連続ドラマ 「パンドラ」 。
「人類の悲願・ガンの特効薬」 を巡って、医師、大学、製薬会社、警察、
政治家の思惑が交錯するという全8回のサスペンスドラマです。
脚本は井上由美子、
演出は河毛俊作や若松節朗というテレビ界の最強メンバーが参加しています。
「CMがない分、描く内容にも制限がない」 (番組案内誌より) という触れ込みで、
現在折り返し点にあたる4回目が終わったところです。

でも、これまでのストーリーは、正直言って物足りません。
誰が特効薬を発表するか、どの製薬会社が発売するのかというストーリーは、
ドラマが掲げたテーマと比べ、あまりに些細にすぎるのです。
肝心なガンの特効薬がもたらす影響については、登場人物の誰もが
「これが世に出たら、世界は一変する」 と騒ぐばかりで、
世界がどう一変するかの説明がまったくない。
ガンが治癒可能になったら人口はどのくらい増えるのか。それによって、
日本の社会保障費はどうなるのか、日本の国力は増すのか縮小するのか。
さらに言えば、欧米の人口も増えるでしょうから、
世界のパワーバランスがどのように変貌するのか。
まったくといって、語られていないのです。
これでは、
ドラマのテーマにガンの特効薬をもってくる必然性はまったくありません。
水虫や薄毛の特効薬であっても、ドラマは十分に成立するのです。
サスペンス映画にテーマは不要という考え方もあります。
たとえばヒッチコックの 「北北西に進路を取れ」 などの一連のスパイ映画。
事件に巻き込まれた主人公が偶然知った秘密の内容は、
ストーリーと無関係でも構わない。
ヒッチコックはこれを 「マクガフィン」 と呼びました。
スピルバーグのインディ・ジョーンズもそう。
インディが探している秘宝の正体は、実は何でもよいのです。
(C) wowow
でもこの 「パンドラ」 はそれが許されない。
なぜなら、 「人類の悲願・ガンの特効薬をめぐる本格医療サスペンス」
とうたっているのだから。
NHKが1月に放映した 「パンデミック」 というドラマは、
鳥インフルエンザが日本に上陸した場合の国民への感染の状況を克明に描き、
ストーリーだけでなく、シミュレーションドラマとしても一級品でした。
同じくNHKの 「ハゲタカ」 は、
外資ファンドによる日本企業のM&Aを題材にしたドラマですが、
こちらもM&Aに関する情報量が膨大だったことは、
この場で書くまでもないことです。
「パンドラ」 もガン特効薬が発明されたあとのシミュレーション
(それも地球規模の) もきちんと描き込んでもらいたい。
そうすれば、小松左京の 「日本沈没」 や 「復活の日」 に匹敵する
傑作となるに違いありません。
ドラマはまだ折り返し点です。
単なる人間模様のドラマに終わらぬよう、期待しています。
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